外国法人が日本に子会社(支社)を設立する場合、株式会社形態には、合同会社にはない多くのメリットがあります。
特に、日本市場での信用力や将来の成長性を重視する企業にとって、株式会社は依然として非常に有力な選択肢です。
1.日本市場における高い信用力
株式会社は、日本で最も一般的で認知度の高い会社形態です。日本の会社形態の80%以上が株式会社です。特に日本の上場企業、大企業は、ほぼすべてが株式会社です。
そのため、
- 日本企業との取引
- 大企業・官公庁との契約
- 金融機関との取引
において、対外的な信用を得やすいという大きなメリットがあります。
「株式会社」というだけで、取引先からの信頼性が高まる点は、日本市場では非常に重要です。
日本では依然として、会社形態そのものが企業の信頼性を判断する一つの基準として機能しており、「株式会社」であること自体が、取引先や関係機関に対して事業の継続性・組織の安定性・責任体制の明確さを示す要素となります。
特に、初めて日本市場に参入する外国法人にとっては、「株式会社」という名称がもたらす安心感は非常に大きく、商談や契約交渉の初期段階においても有利に働くケースが少なくありません。合同会社のように、代表社員や職務執行者といった特殊な制度を説明する必要がなく、実務上のコミュニケーションコストを大きく削減できます。
また、株式会社は取締役・株主・資本金などの情報が登記簿上で明確に整理されるため、ガバナンス体制や意思決定構造が分かりやすく、日本側の取引先や金融機関からも理解を得やすいという実務上の利点があります。
2.資金調達・投資受入に有利
株式会社は、株式発行による資金調達が可能であり、
- ベンチャーキャピタル
- エンジェル投資家
- 事業会社からの出資
など、将来的な投資受入に柔軟に対応できます。
日本支社(子会社)単体での成長戦略を描く場合、株式会社は極めて相性の良い会社形態です。
一方、合同会社は、ベンチャー投資を受け入れる性質の会社形態ではなく、基本的には出資した者が会社の業務執行を行う形態のため、投資家による資金調達が難しくなります。
IPO(株式公開)が前提とされない形態であるため、合同会社は株式市場への上場ができません。
将来的に、株式発行による資金調達を視野に入れているなら、日本法人単体での成長戦略を描く場合、株式会社は極めて相性の良い会社形態です。
日本では、投資実務や企業評価の多くが株式会社を前提として設計されているため、投資家側にとっても理解しやすく、意思決定が行いやすいという特徴があります。
その結果、合同会社と比較して、出資交渉や企業価値評価(バリュエーション)が円滑に進みやすい傾向があります。
また、将来的に
- 増資による事業拡大
- 株式の種類(普通株式等)を用いた持分調整
- 海外本社との資本関係の整理
といった中長期的な成長戦略を描く場合、日本支社(子会社)を株式会社として設立しておくことで、資金調達面での選択肢を狭めずに事業運営を行うことが可能となります。
3.将来のM&A・事業再編に対応しやすい
株式会社は、株式譲渡や合併、会社分割などの制度が整備されており、
- 日本法人の売却
- 合弁会社化
- グループ再編
といった将来の戦略にも柔軟に対応できます。
中長期的な出口戦略を視野に入れる場合、株式会社は非常に適した形態です。
4.ガバナンス体制が明確で、国際的な経営管理に適している
株式会社は、株主総会・取締役・代表取締役という明確な統治構造を持ち、経営意思決定および責任の所在が制度上はっきりしています。
このため、
- 株主(海外本社)と経営陣(日本法人)の役割分担
- 日本支社(子会社)における権限範囲・決裁フローの明確化
- 重要事項と日常業務の切り分け
といった点を整理しやすく、海外本社と日本支社(子会社)の間でのガバナンス構築が容易です。
特に外国法人の日本進出においては、「誰が最終的な意思決定権を持つのか」「日本支社(子会社)にどこまで裁量があるのか」といった点が重要になりますが、株式会社ではこれらを取締役会・株主総会の枠組みの中で制度的に整理することができます。
その結果、
- 内部統制
- コンプライアンス対応
- 日本側従業員や取引先への説明責任
の面でも安定した経営体制を構築しやすく、国際グループ企業としての信頼性向上にもつながります
5.このような企業に株式会社形態の日本支社(子会社)はおすすめです。
日本市場を一時的なテストマーケットではなく、中長期的な事業拠点として位置づけている企業、日本企業や大手取引先との継続的・大規模な取引を想定している
企業、将来的に外部からの資金調達や戦略的パートナーの受入を検討している企業、日本支社(子会社)としてのブランド力や対外的な信頼性を重視したい企業、
さらには、将来的なM&A、合弁化、グループ再編といった選択肢も視野に入れている企業にとって、株式会社は非常に相性の良い会社形態といえます。
「最初は小規模でも、将来的に日本支社(子会社)を成長させたい」「日本市場でしっかりとした拠点を築きたい」と考える企業ほど、株式会社を選択する意義は大きくなります。
一方で、設立費用や運営コストは合同会社より高くなるため、事業規模や将来計画に応じて、最適な会社形態を選択することが重要です。
6.株式会社の日本支社(子会社)設立の必要書類について
株式会社の日本支社(子会社)設立に必要な書類のうち、特徴的なものとして、定款認証の際に発起人(株主となる本社)の宣誓供述書(Affidavit)の提出が求められます。
この宣誓供述書は、日本の会社における登記簿謄本に相当する書類であり、本社の法人情報を証明する目的で提出されるものです。
一般的に、宣誓供述書には以下の 7つの項目を記載します。
≪宣誓供述書に記載する情報≫
| レ | 必要情報 |
|---|---|
| □ | 本社の商号 |
| □ | 本店所在地 |
| □ | 本社の代表者の氏名 |
| □ | 本社の代表者の署名 |
| □ | 本社の代表者の住所 |
| □ | 本社の代表者の役職 |
| □ | 本社の事業目的 |
7.法人口座の開設について
最後に、会社設立後に多くの企業が直面する課題の一つが、法人口座の開設です。
法律上は、海外の本社1社のみを株主として、日本支社(子会社)を設立すること自体は可能です。しかし、日本に在住する取締役がいない場合、設立後に法人口座を開設することは、現実的にはほぼ不可能に近いのが現状です。
会社は設立したものの、法人口座が開設できないといったリスクを避け、円滑に事業を運営するためにも、日本在住の取締役を選任したうえで法人口座を開設することを強く推奨しています。
当社では、外国企業の日本進出において、株式会社・合同会社いずれの形態についても、事業内容や将来計画を踏まえた最適なご提案を行っております。
日本支社(子会社)設立をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください








